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第2章:品評会「第4話:「本日のメインイベント!」

風千さんが身もだえした西瓜

そして風千さんが勝利の笑みを漏らした西瓜


 さて。やっと西瓜品評会であることを意識した風千が、「西瓜を切ろう」と言い出した。
西瓜は二つ並べられている。一つは大玉西瓜、もう一つは黄色い外見を持つ小玉西
瓜だ。大玉と言っても、それ程大きくはない。叩いてみると、しっかりと実の詰まっ
ている音がした。小玉の方は、あまり熟れている様子はなかった。
 入刀式は、風千の手によって行われた。
 実は、風千の育てていた大切な「一粒種」は、先日彼女自身が行った入刀式で「ハルク」
だったと判明している。つまり、緑色の太い筋が、赤い実に走っていたのである。

 西瓜に包丁をあて、一気に下に引き下ろした風千。びしびしっという音と共に、西瓜が
真っ二つに割れた。中から現れたのは、良く熟した真っ赤な果肉だった。
 それを見た途端、風千は身もだえしながら叫んだ。

 「妬ましぃぃぃっ!!」

 その姿が、あまりにも「お子さま」だったので、居合わせた一同は大爆笑してしまっ
た。笑われてしまったが、風千にしてみれば笑い事ではない。
 見た目は関係ない、とばかりに、切り分けた西瓜をさっそく口に含む。しばし沈黙する
風千に、育ての親のれいんがおそるおそる、いや、興味津々で尋ねた。

 「どう?」

 風千は悔しそうな顔で答えた。

 「…うちのより、おいちい」

 まぁ、それも仕方ない。風千の西瓜は「ハルク」だったのだから。続いて、小玉西瓜も
風千の手によって二つに切られた。
 こちらは大玉西瓜と違い、まるで熟れた様子はなく、しろママに言わせると「うっすら
と血が滲んだような」赤だった。当然だが、西瓜の匂いはなく、白瓜やキュウリを思わせ
る青臭い匂いである。
 それを確認した風千は、今度は満面の笑みになった。ようやく「勝った」と思えたのだ
ろう。
 小玉の方は仕方ないので、漬け物にすると言って、れいんはキッチンに下げた。
 切り分けられた大玉西瓜は、一同に配られた。それぞれがしばし無言で、西瓜を頬張る。
何しろ今回のこの集まりは、「大ボケ大会」や「食い放題観音奉納会」ではなく「西瓜品
評会」だからである。

 「やっぱり、甘みが足りないわね」

 愁傷にれいんが感想を述べた。

 「今年は冷夏だもん。仕方ないよ。買ってきた西瓜もこんなもんだったし」

 「そうだよ。雨ばっかりだったモンね」

 しゃりしゃりとした西瓜は、口に涼しく、しばし一同は西瓜の味に身を任せた。
 しかし、この連中。先にも述べたが、静かなのは何かを口に入れているときだけなのだ。
西瓜を食べ終わると、再び騒がしい会話が始まった。





つづく…
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